創業1879年(明治12年)。
蔵元は現在5代目の庄司勇人さん。
戦後の混乱から高度成長へと向かおうとする1970年台、祖父の3代目勇さんは、当時の酒の品質や、これから来るであろう食の洋風化を見越して、舵を切りました。
まずは、“ヒトの体に入るものなのだから、美味しくて、安心・安全なものでなければならない。”との考えで、当時はまだ珍しかった、農薬などを使わない、自然栽培米を酒米に起用しました。
もう一つは、当時は甘い酒が主流でしたが、“洋食にも合う酸と旨味がしっかりし、また熟成に耐えうる酒を”と1971年(昭和46年)AFS(アフス)を開発しました。
これが今もこの蔵の大きな特徴となっています。
他の蔵ではほぼ見られない「高温山廃もと」で全量仕込み、長期熟成を可能にしています。
5代目勇人さんは、さらに酵母・乳酸菌無添加の自然醸造に取り組み、またAFSの樽熟成や貴譲酒など、新たな展開へと進んでいます。
東京駅からJR外房線に乗り約1時間40分で大原駅へ。
そこから徒歩5分ほどの所に、木戸泉酒造があります。
蔵は大概駅などから遠い場所にありますが、ここはアクセス抜群。それもそのはず、木戸泉酒造があったから、大原駅が出来たとか。
最近は米の香りより、機械の臭いがする蔵もありますが、木戸泉は蔵に入った瞬間の香りと空気感がとても心地よい蔵です。道具のほとんどが木製なのが、この気持ちよさに繋がっているのかな?
10月からの仕込みが始まる前に、竹を切ってきて組み上げます。これは洗濯物干しです。
そしてたくさんの人が集まって、この大きな酒林を作ります。
もちろん杉の枝を拾いに行くところからね。
毎年楽しみに来てくれる人も多いそうですよ。
こうして、やっと造りが始まります。
洗米
せーので、同じタイミングで洗います。
洗米中も米が水を吸収するので、タイミングを合わせます。
その後は、時間を計って改めて吸水させます。米の水分量は重要です。
こだわりの麹を蒸し米にふります。
麹は、もやし屋(麹屋)さんから買うのですが、今は人の都合で作られた麹、(例えば酸が出にくいモノとかに品種改良されているんですね)が何種類もあります。
木戸泉さんでは、まず麹屋さんに無農薬の玄米を送って、昔からある何も操作されていない麹を生やしてもらっています。
“素性のわからないものは使いたくない” とのことですが、わざわざ米まで送る蔵は、まずないでしょうね。
私も、ちょっと修行を。米25㎏。担いで2階までは登れず(汗)。邪魔しただけですね…。
高温山廃もとを造る「酒母室」
ここで、酒の元になる、酒母が造られます。
麹と蒸米を入れて、普通は水を入れますが、ここはお湯を入れます。ゆえに高温なんですね。
通常はそこに酵母と乳酸菌を入れますが、数年前から、添加せず自然醗酵もしています。
蔵にいる菌がタンクに入って勝手に醗酵してくれるのです。
それでいて、安定した旨さを出すのですから、素晴らしいことです。
ワインのように
“今年は去年と違ってこんな味!”
なんてことが許されない日本酒の世界で自然に、かつ安定した品質で醸せるというのは、並み大抵なことではありません。
きちんと道具の手入れをし、常に蔵を清潔に保ち、きめ細かい温度などなど、小さなひとつ、ひとつのことが大切で、だから自然だけど偶然ではないんですよね。
そして、話題のAFS(アフス)もここで造られます。
木桶のAFSは元気そのもの。
そして、これは手で混ぜるのです。
さすがに、これには驚きました。
木桶は冷めにくいので、手で温度を感じながら混ぜるのがいいのだとか。
本当に面白い世界です!
最近は、酵母も乳酸菌も入れないことが多いですが、使う時は7号酵母の泡有です。
今は、泡有を見ることも少なくなりましたが、この泡にもちゃんと意味があります。
泡の中に酵母が入って、その間液体の部分で糖化が進み、進んだところで泡にいた酵母が液体に入るので、旨味が多くなり、さらにキレも良くなるのです。
また、分析などができなかった時代は、この泡の大きさや立ちかたで、醗酵の具合を知れたそうです。
タンクの半分ぐらいがアワアワになってしまうので、効率から考えると悪いのですが、いいモノを造ろうと思うと譲れないところなのですね。
季節酒。こちらは造りの時期だけのお楽しみ~。
また秋には、秋あがりが登場します。
レギュラー酒。いつでも美味しく揃っています!
真ん中の黄色ラベル「醍醐」は、蔵人が大好きな酒。
このお酒が好きすぎて、入社した若い蔵人が約2名いるんですよ!
AFSが進化しています。
桶仕込み、樽熟成、貴醸酒、貴醸酒の梅酒と。
どこまで進化し続けるのか楽しみです♪
1974年の古酒から、“これって日本酒??”って思う、びっくり美味しいもの、やっぱり日本酒って美味しいね!と思わせてくれるものまで、幅広いラインナップの木戸泉さん。
生ハムからタコの串焼き、チョコレートまで、それぞれのお酒でピッタリのマッチングが楽しめますよ!
ぜひ一度、木戸泉の世界へお越しくださいませ。
色々取り揃えてお待ちしています!