あっ、そっか!
「牛はいつでもお乳を出すと思っていませんか?
牛も人も同じ、赤ちゃんを産んだときしかお乳は出ないんですよ」
98年頃だったでしょうか、初めて木次さんを訪ねた時、そう言われて、「あっそっか!」
当たり前のことですが、私はそれまでは考えたことがなかったです。
こちらは、島根県にあります木次乳業さん。
日本ではじめて、パスチャライズ(低温殺菌)牛乳を開発したことでも有名です。
佐藤忠吉さんは、自らを百姓と名乗り、食べることは、生物の命をいただくことであり、自然に逆らわない生産、食品製造業の要は素材に尽きるとし、その理念のもと創業されました。
日本は山の国です。大草原で放牧をしようとすると、山を切り崩さないといけません。
何とか山岳地帯でも飼育できる牛はいないだろうか・・・。
そう考え選んだのがブラウンスイス種です。山登りが上手で乳に含まれる脂肪分などが飲用に適しているそうです。
木次さんでは、朝8時に牛舎でお乳を搾ります。
あっ、その牛舎がちっとも臭くないんですよ。
終わると、みな個々に横手の山 “日登牧場”にブラブラお散歩に出かけます。
山で草を食べたり、遊んだりしながら、4時頃になると呼びに行くわけでもないのに、ならんで牛舎に帰ってきます。
そして二度目の搾乳。これで一日終わりです。
牛は、みんな優しいイイ顔をしています。
ブラウンスイスの乳は週に4回しか出荷されません。
それは、乳の量もあるようですが、仔牛の為でもあります。
普通の酪農は効率化のために仔牛に初乳すら与えません。
そして常に子どもを産ませて出来るだけ多くの乳を搾り出そうとします。
でも、木次さんは仔牛のおこぼれを人間が頂くといった考え方ですね。
昭和30年代、農業に農薬や化学肥料が使われ出した頃、牛にも異変がおきました。
原因不明の病気に悩まされ、それが農薬中毒だとわかってからは、伝統農法を見直し有機農業への取り組みを始められました。
牛には、遺伝子組み換えでない配合飼料、牧草を与えストレスなくのびのびと飼育されています。
せっかくの牛乳、 “美味しい生に近い状態で飲んで欲しい”と考えパスチャライズ(低温殺菌)&ノンホモ(脂肪球を攪拌しない)を導入。
この殺菌方法にするには、より厳しい衛生管理と乳の質の高さが求められます。
牛乳独特のあの臭いのは超高温殺菌(普通の牛乳の殺菌方法)によるもので、また栄養成分にも影響があるようです。
一頭一頭大切に飼育され、従業員のみなさんも家族のようです。
牛乳は激しく賛否両論があります。
私も木次さんを訪ねるまでは牛乳には批判的でした。
でもこんな風に考えて、やさしい牛で・・・。
飲むなら木次さんのをと思いました。
どうも牛乳は体に合わないという方でも、なぜか
“この牛乳なら美味しく飲める”
とおっしゃって下さる方が多いのが不思議なような納得のような。
牛乳の配達車に、
“赤ちゃんには母乳を”の文字が印象的でした。