最近では、よくテレビの取材も受けられ、ご存知の方も多いかと思います。
私も大ファンですし、もう手放せないとおっしゃるお客様も少なくありません。
当店の隠れた人気商品 「無添加石鹸」 を造っておられる、石鹸職人 「桶谷正廣さん」です。
工場見学させていた時のお話しを交えながら、ご紹介致します。
創業昭和26年、城東区関目にその工場はあります。
この辺りは、古くから石鹸工場が点在する町で知られています。
時代の流れで、周囲の石鹸工場が次々と合成加工石鹸メーカーへと変わってく中、桶谷さんだけは、天然素材を使った昔ながらの手法をかたくなに守り続けてきました。
彼の造る石鹸の素材は、牛脂、ヤシ油、苛性ソーダーと、いたってシンプル。
現在の石鹸の多くは、すでに出来あがった石鹸素地を加工して、香りを付けたり、形を変えたり、保存性を高める為に、多くの合成物質が使われています。
桶谷さんは、直径2mほどの大きな釜で牛脂とヤシ油を炊きます。
これは、油脂を脂肪酸とグリセリンとに分ける作業です。
グリセリンは下方に沈み、それは捨てます。
油脂屋さんに注文すれば、脂肪酸だけになったものが手に入るそうですが、それでは
“職人である意味が無い” とおっしゃいます。
釜炊きをする事で、微妙にグリセリンが混ざり、それが肌にしっとり感を与えるそうです。
なるほど、理屈はよく分かりませんが、確かに桶谷さんの石鹸で顔を洗っても、全然つっ張らないですよね。
次に、苛性ソーダーを徐々に加え、けん化していきます。
「ここは石鹸との真剣勝負や。目をそらしたら、石鹸に失礼や」 と、摂氏何千度にもなる石鹸が飛び散る中、釜をじっと見つめ、かき混ぜ続けます。
そして、「今だ!」
と塩を入れ(このタイミングが難しいそうです)、不純物と石鹸を分離させ、そのまま約30時間熟成させます。
その後、四角い型に移され練って空気を抜いて、2日間熟成させ、出来たものをピアノ線で切り、すのこの上に並べ乾燥させてやっと出来上がりです。
そして、完成品を 「パクリ」。
食べて確認されていました。
ビックリしましたが、ネズミもよく食べに来るそうで…。
「油脂だし、添加物入っていないからな~ねずみは賢いから、添加物が入っているものは絶対に食べへんからな~」 と。
「味見したら、一番出来がようわかる」 そうです。
造りに7~10日もかかり、作業の厳しさを考えると、手作りされる方がいなくなっていくのも分かりますね。
今では、このような造りをされるのは、全国でも10人足らずだそうです。
そして、桶谷さんの後継者も、まだ決まっていないそうです。
桶谷さんがいなくなったら、この石鹸は…。
私が使う一生分を買いだめしておこうかな?
と思ったら、
「この石鹸は、生きているから、出来たてを使って欲しい」 と言われました。
保存料など入っていないので、変形したり、茶色くなったりするそうです。
石鹸を、ここまで思いを込めて造られているとは、感激しました。 ぜひ後継者を!と強く思い、工場を後にしました。