CATEGORY REPORT 2017
ワインの酸化防止剤について
今回は皆さまからよく質問いただく、ワインにおける酸化防止剤についてです。
ポイント1.いつ、どのように使うか
培養酵母で造る一般的な造りの場合、収穫したブドウをタンクに入れ、
同時に酸化防止剤(亜硫酸塩)も入れます。
人の力で培養された酵母は弱く、雑菌があると上手く醗酵ができません。
または、雑菌に負けて腐る場合があります。
なので、まずは酸化防止剤を入れて雑菌を殺し、タンク内をクリーンな環境にしてから培養酵母を投入し醗酵を始めます。
ポイント2.タンクから移すごとに入れる
ワインの滓(オリ=皮などのカス)と果汁を分ける作業(滓引き)があります。
タンクから移すたびに果汁が空気に触れるので、酸化防止剤を使います。
ポイント3.瓶詰め時に入れる
瓶詰め後、ワインが再醗酵したり、痛んだりしないように添加します。
残留基準と弊害
酸化防止剤は、食品添加物なので、残留基準濃度があり、
350㎎/L未満と食品衛生法で定められています。
3つのポイントすべてに使用すると、基準値に近い数値になりますし、
また、天候が悪くブドウの出来が悪い年は使用量が増える場合があります。
一般的な造りのワインの残留量は、250㎎/L前後のようです。
当店のワインは、少ないもので10㎎/L、多いもので100㎎/Lほどで、
一般のものよりかなり低いです。(輸入時に分析表の提出が必要)
亜硫酸塩は、肝臓の呼吸を障害し、アルコールの分解を阻害するなど言われています。
また、残量が多すぎると、頭やお腹が痛くなる場合があるようです。
ワインを飲むと頭が痛くなるという方は、これも原因の一つかも知れません。
酸化防止剤を減らすには
酸化防止剤は、使わないにこしたことはありません。
しかし、製法上ゼロというのは、とても難しいことです。
また、酵母の代謝によっても発生しますので、添加しなくてもゼロにはなりません。
まず、野生酵母を使う場合は、ポイント1での使用はありません。
ブドウの房に付いている野生酵母は、農薬を撒くと死んでしまうので、
畑が有機栽培でないとできません。
ポイント2では、滓引きの回数を減らしたり、様々な入れない工夫があります。
ポイント3は、自然派とよばれる蔵でも少しは入れることが多いです。
国内、輸出向けで酸化防止剤の添加の有無を分けていると思っている方も多いですが、
そんなことはありません。
“酸化防止剤を減らす”には、造り手の不断の努力と、大きなリスクを背負っていることを、ぜひ知ってください。
ちなみに、日本の国産無添加ワインは、酸化防止剤を使わない代わりに、火入れ殺菌をしています。ただし、無添加ワイン=無農薬ワインではありません。
簡単な説明になりましたが、詳しくはまた、お気軽にお尋ねくださいね。
【管理栄養士 坂東武子】